西島秀俊と原田真二

西嶋秀俊に参ってしまった。ホの字と言ってもいいくらいだ。改めてぼくは男好きだなあと思う。好きな女優さんと言っても名前が出ないが、男優さんと言えば何人かの名前がすぐさま出てくる。ドラマなんか見る時は明らかに男優さんで選んでいる。その、男好きな、ちがった、好きな男のなかに仲間入りしたのが彼です。

で、いくつもドラマや映画を借りてきて見ちゃいましたが、すげードキドキする。多分顔は紅潮してる。その彼の新しいドラマを見ていたらなんと、「タイムトラベル」がかかるぢゃないですか。もーびっくり!まるでカモネギだ。てっきりリミックスか何かと思ったら、スピッツのカヴァーらしい。というより、ありゃコピーですね。
僕が生まれて初めてEP(「勝手にしやがれ」)を買ってジュリーにしびれていた頃、それに劣らず好きだったのが原田真二でした。スターであるジュリーの歌とは違って、醸し出される世界がアーティスト的というか、暗い部屋に灯ったストーヴのような、抒情や幻想を感じさせてくれたように思う。ま、曲もさることながら、詞が松本隆だからね。作詞、作曲、編曲なんていうのを意識したのもその時が初めてで、だから松本隆なんて名前もその時知りました。さきほどの「違い」は阿久悠松本隆の違いかもしれません。
小学校4年生のぼくでも、くりくりの髪形にビーバーみたいなかわいさとあの演奏のスタイルは十分魅せられました。今時は、インターネットで昔の映像がなんぼでも見れるんですねえ。見てて、ふと、最近かわいくてきれいだなあと思ってみていたチャン・グンソクになんか似てるかもと思ったのですが、それはさておき。

たしか、デビューシングル「てぃーんずぶるーす」と「キャンディ」「シャドーボクサー」が同時にリリースされて3つとも「ザ・ベストテン」にランクインしてたと思う。その3作についで、年が明けて4月ごろに「タイムトラベル」が出たんだったと思うけど、そのシングルが当時、初の「両A面」というおもしろい出し方をしていて、その両A面という戦略は次の「サウザンドナイツ」に引きつがれたんぢゃなかったかな。で、これまたヒットしたのが夏ごろで、でもそのあとぱったりヒットが出なくて、年末の紅白にはかろうじて選ばれるという急降下ぶりで、その数カ月の間の苦悩や闇がうかがえるのが「OUR SONG」です。「ぼくは託すだろう。この歌に明日を。きみはわかるだろう。今の姿が」(これは作詞作曲ともに原田真二)。年末に出されて紅白でもたしかそれを歌ったと思うんだけど、この歌自体が祈りと言ってもいいかもしれません。宗教的な次元に踏み込んだ感のある曲ですね(「きみは今、すべてのなかにあるのさ」)。まあ、これらは僕の記憶だから確かぢゃないかもしれませんけど。
原田真二の歌をひさしぶりにひとしきり聞いて、単に過去を思い出したということではないと思うのです。音楽はかつてそれにふれた時に生じた何かを、再び、まるでそのままに生じさせる魔法であり、過去が現在すると言ってもいい。いや、それでは足りない。音楽に古い新しいはないと思うんです。絵のように空間的ではなく、明らかに時間的な営みなのですが、その時間的な営みが不思議なことに時間が統べていない場所に連れて行ってくれるように思うのです。