心耳に宿る星

凍る夜の星晨めぐる音すなり 大峯あきら
人には、目の人と耳の人があると思う。目は空間をとらえ耳は時間をとらえる。絵は目で見る、音楽は耳で聞く。絵は一瞬で見れるが音楽は時間を要する。写生を本質とする俳句は、世界を空間で切り取る目人間的芸術なのだが、空間に音を聞く者もある。
 星は、もちろん目で見るのであるが、あらゆる音が封じ込められるように大気が凍てつくことで、耳に触れてくるのである。氷を割って進む南極船のように、凍る空間を星のさえたともしびが砕きながら進むようである。天空のきしみを星の運行が拡声器のようになって聞こえしめる。
真冬におとづれる、静けさの響き。
耳人間は満天の星を「千のタンバリンを打ち鳴らしたような星空」(チバユウスケ)と聞くのである。目に見えないものを見る目を心眼というごとく、耳で聞こえないものを聞く耳を心耳という。