2014-01-01から1年間の記事一覧

一人聞く

ひとり居る時の時雨のよく聞こゆ 大峯あきら ひとりで居るということは大切なことだ。なぜなら、ものが聞こえるからだ。普段聞き逃しているものは多い。なぜか。おしゃべりしているからである。一人ぢゃないからである。人といるときの耳は人間の声を聞くた…

うとうと解脱

うとうとと生死の外や日向ぼこ 村上鬼城 日向ぼっこの心地よさに眠ってしまうかのように、安らかに死んで行けたらいいなという感傷の句と受けとめたら的外れである。眠るように死ねたとしても、それは死んだだけであって「生死の外」ではない。 この場合の「…

自発性のもの

中学生になってピアノをやめた娘が文化祭の合唱コンクールでピアノ伴奏に立候補した。吃驚した。拍手したいような嬉しさがあった。ピアノを習ってたが故のものだと、あらためてピアノの先生に感謝の気持ちが起こった。 だって、習ってた頃の娘はほんとにひど…

合唱コンクールって何だ!?

中学生といえば合唱コンクールが定番なのだろうか。誰が、何のために、誰のために、やってるのか、よくわからない。まあ、学校行事だから生徒の「健全育成」あたりなのだろうが、健全さの尺度は多様にあり得る。 歌を歌うことでクラスを団結させる。健全な歌…

柿と太陽

太陽の裏まで見えて柿熟るる 佐野青陽人 家の窓から柿の木が見える。ある朝、柿の木の間から朝日が見えた。朝日なんだけど、柿の実がなってるかのようだった。 太陽と柿の実が重なるということは不思議でもない。しかも、熟れて発光する柿の実がたわわになっ…

子どもの言葉―「何もいらない」は「かっこいい」?

小5娘が寝る前に本を読んでと言うので酒井駒子さんの「しろうさぎとりんごの木」を読んだ。しろうさぎとりんごの木作者: 石井睦美,酒井駒子出版社/メーカー: 文溪堂発売日: 2013/10/10メディア: 大型本この商品を含むブログ (2件) を見る「しろうさぎにとっ…

mighty lemon drops

you tubeっていうものにはしばしば驚かされる。 辞書をひらくと芋づる式に次から次に引いてしまう時のように、次から次とみたいものが派生する。思わぬものも発見する。イアン・マッカロクの最近の映像とか。人は年をとると基本太るんだと思わざるを得ない。…

野分リアリティー

猪もともに吹かるる野分かな 松尾芭蕉 台風、大雨、洪水、さまざまな形で自然が猛威をふるった。ひとは荒ぶる自然におそれを抱く。しかし敬う感じが同時にあるだろうか。自然を大切にというのは抽象的な感傷にすぎず、命を恵み与え命を奪う、いづれも同じ自…

かんざしのお肉

末の娘の名前は「言」と書いて「ことは」という。名前の深遠な由緒は、話すと長くなるので機会を改める。 いづれにせよ、言葉こそ大事だと、名付けた当時も今も、思っている。 言葉という名を身に帯びて産まれてきた娘は、言葉が遅かった。彼女の祖父はそれ…

Ken Yokoyamaのライヴと子どもの成長

Ken Yokoyamaのライヴが家族イベントになっている。 昨年は8月に米子であり、44歳にして初めてダイヴをして、人に支えられる心地よさをたのしみよろこんだ。ダイヴがこわかったのはきっと人を信頼していなかったのだろうと思われた。浄土真宗系の講演を依頼…

天の川

五月雨をあつめて早し最上川 松尾芭蕉 雨が降っていない時は川は川として独立のもののようである。川はその由来を静かにたたえてみずからの流れに休らうことができる。その由来が現在進行形的にあらわになったとき、川はもはや川ではいられなくなる。 大雨の…

たましいの由来

かたつむりたましひ星にもらひけり 成瀬櫻桃子 この作者は、かたつむりというあのべたべたぬるぬるした生きものをみて、そのうちに「たましい」を感得しているということはわかる。 あんな「下等な」生きものに、魂なんてあるわけがないと思うだろうか。 か…

聖なる真昼

人は死に竹は皮脱ぐまひるかな 大峯あきら 竹の生命力は比類がないのではなかろうか。一日に数十センチも伸びる生物がほかにあるだろうか。時折竹の皮がはがれる音のみがする真昼の竹林は耳鳴りがするくらい閑かだ。 そんな生命力がみちた閑かな真昼にも人は…

宗教か自然か

大寺を包みてわめく木の芽かな 高浜虚子 桜の花びらを掃く日々がぱたりと終わるものさびしさを感じる時は木の芽時でもある。新緑が花びらを押しだすように散らすようでもある。しかし、この句の木の芽のいきおいはそれどころではない。「わめく」のである。…

娘の、終わりという節

終わりの季節である。娘が小学校を卒業した。そして、低学年の頃から習っていたピアノをやめる。終わりの時は勝手にでもおとづれるのであるが、そういう「終わり」に心がついて行っているかどうか。終わりに際してどんなことが経験されるのか。かの娘は終わ…

豊かさの悦楽

蟻出るやごうごうと鳴る穴の中 村上鬼城 啓蟄を過ぎて桜のつぼみが一度にほころびだすような日和の後、春分というのにあられや吹雪に見舞われる境港の今年。 虫たちも、穴から這い出す時機をつかみあぐねているのではなかろうか。 穴からひょこりと現れ出た…

権威は何のため

儀式を厳かたらしめるものは権威。逆に、権威は儀式によって威厳を得る。 神仏そのものの権威は儀礼を必要とせず、ダイレクトに個人につきささる。神と個人は直接する。直接経験がないものは、間に社会組織としての権威をはさんで宗教を信仰する。つまり権威…

自己をすてる

自分が身心を賭して批判してきたもの、拒否し続けてきたもの、そこに身を置くこと。疑いも疑問も批判もはさまず、批判してきた当のものを全面受容する。受け容れがたかったものが全面肯定の様相で立ち上がる。

心耳に宿る星

凍る夜の星晨めぐる音すなり 大峯あきら 人には、目の人と耳の人があると思う。目は空間をとらえ耳は時間をとらえる。絵は目で見る、音楽は耳で聞く。絵は一瞬で見れるが音楽は時間を要する。写生を本質とする俳句は、世界を空間で切り取る目人間的芸術なの…

クラシックで踊る

クラシックのコンサートで椅子に座ってるのが耐えられなくなって、後ろの方に行って踊りました。クラシックと言っても古澤巌なので、わりとパンクなのですが。 音に体を乗せる、そして委ねる。この心地よさと世界の広がりは、耳だけで聴いたのではあり得ない…

鎮魂雪

この雪に昨日はありし声音かな 前田普羅 カメムシを引き合いに出す大雪予想が今年しばしば聞かれたが、それほどでもない。ただ、夜のうちにひっそりと雪が降り、朝窓をあけてまばゆい驚きを経験するって日は、あった。 雪の日は、静かという音がする。それは…

柿と太陽

太陽の裏まで見えて柿熟るる 佐野青陽人 家の窓から柿の木が見える。ある朝、柿の木の間から朝日が見えた。朝日なんだけど、柿の実がなってるかのようだった。 太陽と柿の実が重なるということは不思議でもない。しかも、熟れて発光する柿の実がたわわになっ…

『不思議な少年』を読む

朝から酒飲んで何もしないで(出力しないで、つまりできるだけ筋運動はしないで)すごすのが正月だということで、久しぶりに読書をした。それも、ずっと読みたくて積読だった本を。いやあ、おもしろかったなあ。マーク・トウェインの『不思議な少年』。不思…