2013-01-01から1年間の記事一覧

苦しみの中の

咳き込めば我火の玉のごとくなり 川端茅舎 風邪の季節になった。風邪はかまわないのだが、風邪に対する世の中の反応がしんどい。体が病気に対応しているプロセスを感じながら見守りながら横たわっているのはおもしろいことだ。熱の上がる感じ、全身のだるさ…

「いのち」に死をお見舞いする

うちは精肉店作者: 本橋成一出版社/メーカー: 農山漁村文化協会発売日: 2013/03/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (13件) を見る『うちは精肉店』という、牛を屠る写真集があり、それが映画化されたようである。いい本である。ただ、そ…

14歳の現況

息子が14歳になった。図書館で池田晶子の「14歳の哲学」をおもしろく読んでいるようだ。「古事記」「出雲国風土記」は相当好き、で、「世界の神話は読みたいものがいっぱいでこまる」と言っている彼にねだられたのは、「マハーバーラタ」「マナス」「リグベ…

世界変容

秋風やはがねとなりし蜘蛛の糸 大峯あきら 霧の朝、普段気にも留めてなかった蜘蛛の巣にいたるところで気づくことがある。雨が降って陽がさせば虹が出て、それだけで心躍る景色になることがある。秋風によって蜘蛛の糸がはがねになるというのは詩人ならでは…

金木犀懐胎

木犀を身ごもるまでに深く吸ふ 文挾夫佐恵 甘くてとろけそうな匂いが空間を満たすキンモクセイワールドが、先日の台風で一気に蹴散らされてしまった。 吸うとは鼻先のことではない。吸ったものが腹までおちて全身に渡るのだ。そこを「身ごもる」と表現しても…

目を閉じると見えるもの

目を閉じると、よく見えるもの。 ロウソクのゆらぎ。

宇宙の境港

名月や池をめぐりて夜もすがら 松尾芭蕉 名月を十分堪能できる境港の今年であった。 神仏を作り話だと冷笑する感性に、永遠なるものは感受され難い。見失ったことさえ気づかなくさせるのは、自己肯定感などの前向き自己謳歌主義。せめて悠久なるものに触れて…

はかない?

蛸壺やはかなき夢を夏の月 松尾芭蕉 海に沈められた蛸壺で蛸たちが、朝には引き上げられ食われる運命にあることも知らず、安眠をむさぼっている。もちろん蛸の話ではない。明日をも知らぬわが身なのに明日があることを疑いもしないという、夢を見ているに等…

あまちゃんー歴史と自然

「あまちゃん」をほぼ毎日たのしんでいる。宮藤官九郎ってうまいなあと思う。80年代リアルタイムの世代にとってはなつかしさのツボを刺戟されるし、そうかと思うとなぜか橋幸男だけは本物で、きっとおばあちゃん世代は胸が躍るだろうし。 この金曜日は一つの…

pico la manoで出会った言葉

双子の娘がお気に入りの美容院は米子のpico la mano(ピコラ・マノ)。シャンプーされてる時は恍惚といいたいような表情。みごとなカットに親の僕らもお気に入り。男の美容師さんのお店とは思えない、魅惑的でファンタジックな外観に内装。魔女になりたい娘が…

かそけきこころのざわめき―酒井駒子『BとIとRとD』

子どもは不意に泣きだすことがある。幼稚園ではめづらしいことではなく、訳もわからず泣きだすのである。「訳もわからず」と言ったがそれは大人である。子ども自身からすればきっと理由がある。だからって、大人は不用意にも「何で泣いてるの」などと聞いて…

ミミズ先生

何をしにここに出てきて蚯蚓(ミミズ)死す 谷野予志 炎天下、アスファルトの道を横切ろうとして、途中でからからに干からびて死んでしまっているミミズを見ることがある。 道を渡り切れなかったミミズは一体この道を渡って何をしようとしたのか。何をしにこ…

あきれた僧侶

「まことの保育」という浄土真宗系統の保育体系があり、それ自身いろんな問題をはらんでいるのだが、それは今は言わないでおく。その「まことの保育」をめぐって研修会をしたりなんだりするために大小の集まりがある。ある会で、ある年配の僧侶が、「この歳…

現実の豊かさ

川底に蝌蚪(かと)の大国ありにけり 村上鬼城 蝌蚪とはおたまじゃくしのことであるが、それはすぐ蛙になると思っていた。 旧境港水産高校近辺の田んぼや側溝でおたまじゃくしとりをしていると、相当大きいものもいて、われわれが姿を見せるとすっと底の方に…

蛍と夜景

以下の拙稿は、2002年8月『信仰』(百華苑)という小冊子に収められたものである。当時私は京都の洛西に住んでいた。結婚して家を探していた私どもの条件の一つは「不便なところ」であった。「蛍と夜景」 京都タワーとほぼ同じ高さに、わが家は立っている。…

誠実さ

誠実さとは、倫理という事柄に属す話になるか。善とは何かを考え善を実践することが、倫理や道徳の営みだとしたら、僕にはそれを語る資格はない。専門学校で倫理の授業を受け持った時、最初にそう言って授業を始めていた。善を語ることがはばかられる人間だ…

青い風光

両の手は翼のなごり青嵐 掛井広通 この句が作者に降り立った時、その人は両手を広げ風に向かって立っていたのである。全身に風をはらんで空中にいるかのような感覚に襲われた時、手は翼だと思われた。ほどなく、翼でなく手だという「現実」にもどる。しかし…

死を思う娘たち

家が変わってから、娘たちはそれぞれの部屋でそれぞれの寝床で寝るようになった。しかし、眠る前に呼ばれる。話をしてくれと。長女はたいてい、おもしろい話をしてというのだが、このおてんば娘はなんと、本気で地獄がこわいのである。いい子だ。 「ナンマン…

腹の温度

今日、へー、ちょっといいなと思ったことがあった。米子駅のコンビニにある棚があって、水、お茶のペットボトルが置いてある。「常温コーナー」とのこと。冷蔵庫の普及のせいか、何でも冷やして飲むようになったのだと思うが、たしかに常温の方がよかったり…

世界の転回軸となる一言

Hi-standardというバンドの曲で次のような歌詞がある。 DEAR MY FRIEND I just had to take some time Get back to what was mine Get away from my sweet crazy life Hey good buddy it's been a while How are things for you up there This is all I need…

彼方からのやりきれない蒼白

訃報のおそれを抱いてすごした夜が あけて晴れわたる冬空 子どもたちはキラキラと輝いて うっかりすると泣いてしまうほど まばゆすぎる朝 勘違いするな まばゆいのは 晴れてるからではない 子どもが無垢だからではない 水平線のむこうから 風が吹きこんでき…

へび回想

今年はへび年だというので、何年か前に書きそびれてたことを書こう。何年か前とは2010年のこと。2010−04-04のブログで息子が念願の蛇を捕まえた話をしたのだが、それからというもの彼は立て続けに蛇を捕まえる。そしてシマヘビだけでなく青大将まで捕獲し、…