今日の月:西行がいる

   願はくは花のしたにて春死なん
              その如月の望月のころ
という西行の和歌は有名でもあり、西行という人を考えるとき避けて通れない、辞世の句とみなしてよいものですが、その「きさらぎのもちづき」がまさに今日の月ですね。
    こむ世にもかかる月をし見るべくは
           命を惜しむ人なからまし
と、歌い得た人、彼岸(死んでいくところ)と此岸(生きているところ)とを通底し得るものとしての月の経験があった詩人です。その経験は「命(自分の生)」より大切なものの発見であり、そういう経験こそが宗教的なことだと言えます。
櫻に憑かれ、月に揺さぶられつづけた、彼の狂おしいたましひの最後の落ちつきどころが、如月の望月の歌にあると見るのは不当ではないでしょう。(今山陰は雪ですが)月・花・釈迦の命日をみたした、この贅沢な願いは、実現したようです。