骨とミイラ

息子と病院に行ったら、入り口近くで止まって何かしている。嬉しそうに黒いものを手にしている。それがこれ(写真ではよく見えませんが)。[
生き物の死骸が干からびて真っ黒になったもの。息子はそれが蛙であるという。よくわかるなあ。真っ黒になった肉や骨格のなかに、白骨にちかい色の足の骨もある。それを待合室の椅子の背もたれにのせてじいっと見入っている。テレビでは、たまたまマヤかアステカの文明の番組をやっていて、遺体をミイラにして顔を露出させて、遺族がそれを見ながら暮らしたのだと推定していた。ミイラにして独特な生々しさのある首と、目の前の真っ黒な天然ミイラとが二重写しになり、ミイラの技術って大したものだと感心する。そして、目の前のミイラを見て背骨の立派さに感動する。さすが生命体に左右上下の区別や両端やを可能にする原基であることだなあ。
診察室に入って、彼はK医師に「蛙の骨」といってほこらしげにそれを見せる。そして、骨折した指を早く治すためにつけられていたワイヤーを抜かれる。ドクターや看護師さんは、わたしどもがレントゲン写真のコピーをもらったりしたからだろう、そのワイヤーは持って帰らなくていいのかと訊いてくる。先週、おのれの指に針金が埋まってる様を見てしまって気持ち悪がっていた息子は「いらないいらない。きもちわるーい」。それをきいてドクターいわく「死んだ蛙もってる方がフツー気持ち悪いでしょ」。