赤塚不二夫さんの訃報にふれて

赤塚不二夫さんが亡くなられた。その大変なお仕事をたたえるべきかもしれないが、そうとうパンクだという印象がある程度のぼくにそれはできない。アクの強いキャラクターがたくさんで、存在は言葉と一つだと言わんばかりに、その個性にならった発語がある。「〜ニャロメ」とか「〜べし」、「〜だじょ」、「レレレのレ」、「〜なのだ」などなど。
赤塚不二夫の目に見えていたものは何だろうか。もちろん私にはわからない。ただ、彼が言った言葉をぼくはよく引く。
「このごろの漫画家が駄目なのは漫画読んで漫画描いてるからだ」。ぼくはこの言葉に続けて言う。「宮崎駿は、“最近のアニメーターはアニメ見てアニメ作ってるからつまらん”というし、ぼくの友だちのもとパンクスは“この頃のパンクはダメだよ。パンク聴いてパンクやってるからさあ”と言い、お世話になったある高名なお坊さんは“いのちより大事なものに出会って、初めていのちも全うできる”と言っています」と。
この話をぼくは「本物をよく見よ」ということを語るためにも使うし、縮小再生産の不毛を語るためにも使うが、第一義的にはこの話で「世界の、あるいは本当に生きたものの脱我構造」を伝えたくて、しばしば話している。