諸行無常といふ生活思惟習慣

  2005.12.27
黒い鳥が死にゆく凍てつく日
雀は硝子に体を打ちつけ脳震盪で斃れ
陰惨な雲は時におとづれる晴れ間をたちどころに打ち消し
地滑りのやうな時の定めに
抗ふ術もなく年が暮れる


繰り返される滅亡の中
2005年も死んでゆく
去年(こぞ)今年を貫くものがあるかは知らぬ
没落せぬものなき世界の只中で
束の間を
明日といふ観念の保障で
補填する者からは
それなら生まれてくるのが矛盾だといふ
叫びのあがることはない


人工池のたにしが一匹潰れ
貝殻に護られたひそやかな体が剥き出し
脳だか胃袋だか体液だか見分けのつかないどろどろの
その中に
裂けた白い膜、その只中に
米粒ほどの透きとほる渦巻き文様
ぷつりぷつりと姿がのぞき


消滅の定めを負ひながらなほ
ひしゃげた体の奥に
ひそやかな
未来の恵があるといふ、そのことに


時限装置を埋めこまれた人間そして万物の、その中で
死にゆく母の胎から生まれてくる
滅しゆくこの世界から
生まれてくる、その事実
それ以上の奇蹟がどこにあらう
蝕む者に身を挺して没落するほどの美しさがどこにあらう
蝕む者の白光に照り返されて
老いゆく者はやっと、美しくなる
美しくなる