忘れ物はなんですか−『おじいちゃんがおばけになったわけ』

職場である幼稚園の若い先生が絵本を薦めてくれた。ジワーッと来て、ぽろぽろ涙がこぼれてしまったそうで、本屋で絵本を全部立ち読みしたのは初めてとのこと。成仏できなかったおじいちゃんが夜な夜な孫のところにおばけになって現れるという話(彼女はたしかに「成仏」と言った。事態としてはそのとおりでおかしな言葉づかいぢゃないんだけど、外国の絵本だし、その言葉を聞いたのも久し振りだったし、ことにそれが若い女性の口から出たという違和感が、おもしろかった)。             
「この世に忘れ物があるとひとはおばけになる」らしく、じいじと孫は忘れ物をさがす。忘れ物をさがすことが逆に、覚えてることを起こし出す。おばけは孫と幾晩かを過ごし、自分の思い出と孫との思い出を語る、そのはてに忘れてたことへ辿り着く。挙げられた諸々の思い出は、当の忘れ物でないことは分かっている。でも一つひとつを思い出していくことこそが、肝腎なことへの前庭をなす。
忘れてたことって? それを言っちゃあ、本を読む楽しみを奪っちゃうので、お口にチャック。
絵もいい。ことにおじいちゃんの表情がたまらない。 

おじいちゃんがおばけになったわけ

おじいちゃんがおばけになったわけ