見えない世界のインジケーター;草

ぼくには草刈りをする意味が分からない。だからどうしていいか分からない。夏には庭中に草が茂る。私が働きだしたら今年の草刈りはどうしようと妻が言うので、草刈りに挑戦する。
3月はじめにしては強すぎる陽が首を刺す。小さな草を引く。ぷちぷちぷちという感触が、土の中で起こっていることを告げる。草を媒介に土中と繋がる。小さな草が、毛細血管のような根っこで、しっかりと土に編み込まれていることが知れる。
土中。見えない。目の世界にとっては無いにひとしい、見えないもの。目では出会えないそれとは、触覚で通じる。目にも触れ手にも触れるものとは違う、目には触れられないものを触れるどきどき感。暗さが膨らます、触れることの悦楽。そしてほのかな罪悪感。

娘に、見て!と言われ、見る。草を引く途中、山が出来ることをおもしろがっている(写真でわかるかなぁ?) 頂上がなければ平地に過ぎぬ。尖端に引き上げられることで、平地だったそこはすそ野になる。(拙著p.181参照)そんなことを目の当たりにした。