池田晶子・彼岸・大峯顯

「かつて14歳」さんのコメントをみて、ああ、いやな書き込みだなあ。こういうタチの下品は削除だな。しかも二つも。それでもやっぱり排除は出来るだけしたくないし、一つは残そう。そんなふうに考えていたのですが、そのあとある編集者からの電便で、池田女史が亡くなったということを知りました。
その少し前、岡先生の通夜の日に届いたのは、池田さん生前最後の本になったであろう対談集『君自身に還れ 知と信を巡る対話』。このブログで何度も言及した、大峯顯―池田晶子関連で、しかもこのたびは両者が直に対談をするという面白い本です。
                   

君自身に還れ 知と信を巡る対話

君自身に還れ 知と信を巡る対話

池田さんはきっと「冥福を祈」られることを拒否する人だろうと思われます。だからこそ、冥福を祈る必要のある人だと思われますが、まあ、それはもういいです。その本の中からいくつか引用しておきます。

大峯 ものの本質をいう言葉を学者も信じてない。哲学論文を見たって、そういうふうに感じられることがあるでしょう。この論文を書いたらどこかに就職できる、とかね(笑)。
池田 そういう論文書く人にとっては「しょせん」言葉なのです。「現実は」就職があったりするわけですから(笑)。
大峯 学者の世界でも言葉がそんな風に変質してしまっている。実用語の次元が学問の世界にまで侵入してきてしまう。でも結局、言語が崩壊していくということは人間が崩壊していくということです。
池田 くだらない言葉を話す人がくだらない人間であるのは当たり前なことです
大峯 (略)人間とは彼の言葉ですよ。(略)ちょっと話を聞いてみれば、その人がどういう人なのかすぐにわかりますよね。
池田 その人そのものを表しているということに気がつかないから、みんなつまらないことを平気で言うようになってしまう。(p.15)

大峯 どうしても人間の自己中心性が破られなければならないんですね。難しい問題だけど、やっぱりそれがこれからの人類の課題だと思います。
池田 しかし多勢に無勢ですよ。先生。これだけ世の中に変な加速度ついてますから。
大峯 しかしぼくは楽観しています。真理というのは、必ず明らかになる。
池田 時間を問わずにでしょう(笑)。
大峯 真理の方が強いから。人間より真理の方が強いですよ。そうですね。それを信じると、なんだか安らかになる。
           (「おわりに」p.240)