World  World  World

アジアンカンフージェネレーションの新作を手に入れた。        
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「音楽が新しい世界を作る」といえば陳腐な言い草に聞こえる。
「音楽で世界を変える」といえば世間知らずなロック少年のたわごとのようでもある。
でも、そんなことをまっすぐ歌っているようないきおいがある。そのまっすぐ加減は「高い志」なんて耳を疑うような古風な言葉に噴出している。
無限や永遠を、そしてそれを「無常を知る」のと一つに、歌ってきた人は、世界がターゲットにならざるを得ない。その道の必然性を検証的に跡づけると長くなるので、割愛。西田哲学っぽくあえていうなら、問題の焦点の推移をこんなふうに描ける。
自己? → 自己! → 無 → 私と汝 → 私と彼 → 世界。
真っ直ぐな反戦さえ歌われていて、吃驚。でも、「ワールドアパート」を歌ってしまった以上、「歌う」は「訴う」という経験的語源を内蔵しているので、その結果は当然出てくることであろう。というのも、911を歌った以上、911後の世界に直面せずにはいられない。911後の日本を、つまり日本とアメリカの関係を、そんな世界に棲む自分を、歌わざるを得ない。
その時代には、「そんなぼくに術はないよな」という無力感でいっぱいの少年少女さえ、イラク開戦反対のデモに馳せ参じたのだ。その数、インターネットによる世界連帯の結果、数百万人。
「前向き」とセットでイメージされかねない朝の描写も、「ポジティヴシンキング」に堕ちてない。「君の孤独もすべて暴き出す朝だ」! 闇をたえつづけた者にのみおとづれる健全な朝。だから「君に 降る」のだ。そして、闇は世界の闇、それほどの深度から立ちのぼる朝なのだ。(つづく)