メメント・モリ放送

境港に引っ越してきたばかりの頃、辟易したことがあった。
早朝であるというのにスピーカーからの音が割れんばかりの音量で放送がなる。内容はほぼ聞き取れない。起こされた不快感いっぱいの体で、くりかえされる放送に耳を傾ける。
と、「A班の○川○男さんがお亡くなりになりました。葬儀は○×ホール午後三時」というものであった。
 それ以来、がなりたてるスピーカー音は不快なままであるが、内容には文句のつけようがなくなった。娘たちは人が亡くなったという内容をいやがるのであるが、しかしながら、日々人が死んでいるという事実を告げるのは悪くないと思えてきた。
朝であれ夜であれ幸福であれ不幸であれ、こちらの都合におかまいなしに「人」は死んでいく。「人」と言っても「他人」ではなく、明日は我が身である。メメント・モリの田舎実際版といったところであろうか。