民族宗教の旬

墓のむかいに住んでいる。お盆にはお墓にあたたかな灯がともる。日本の土着的な霊魂観、死生観の発露である。古くからの歴史、神話、風習や風土が豊かに残っているのが山陰であるから、土着的なものの浸透具合が今も強いのであろう。
お盆という時期に「民族大移動」をし、血縁関係にあるものが集まることは、「家族」というものの絆が危ぶまれている昨今には、一層意義深いことになろう。
古来、この島で根強く伝わっている宗教観、特別に「宗教」に入らなくても「自然に」抱いてしまっている霊魂観、それは生活習慣や年中行事にしみ込んでいるので、そういうものに癒されたり安心したりする。「自然宗教」と呼ばれる宗教の効能である。
ただ、血縁や地縁がよりどころとならない者にとっての救いにはならない。そこに「世界宗教」と呼ばれるものの必然性があるのである。