想像郷・山陰

アスファルトに地面が固められても、ひとは土着的な霊魂観、死生観を捨てるわけではない。土着的なもの、風土、歴史、神話等が豊かに残っているのが山陰である。いや、「残っている」のではなく、今も生きているのであろう。生かそうとしている人々もいる。
山陰の風土や文化の遺産をファンタジーに生かし込んでいる二人の児童文学作家の話を聞く機会を得た。安来在住の廣田衣世さんと境港在住の山岡睦美さんである。ヤマタノオロチが飛び出したり、江島大橋が龍になったりする。廣田さんの体験談はリアルとファンタジーの境界が線ではない。
神話とは、ファンタジーをはらんで語られる深いリアリティーである如く、たいていは「現実」の上空3mほどのところにファンタジーは位置するのであるが、のみならず「現実」の基底にも位置するのである。そこを飛んだり潜ったりする力を想像力という。夢見る力は現実を構想し実現する力でもある。