世界変容

秋風やはがねとなりし蜘蛛の糸 大峯あきら
霧の朝、普段気にも留めてなかった蜘蛛の巣にいたるところで気づくことがある。雨が降って陽がさせば虹が出て、それだけで心躍る景色になることがある。秋風によって蜘蛛の糸がはがねになるというのは詩人ならではの直観で凡人には真似できないだろうが、それでも何かの拍子に世界が変わるということがあるのだ。
「ものの見えたる光」を「言ひとめる」ことによって、世界変容が言葉に降り立つ。それを礎に、閃き出た世界を構築して行く努力は可能である。そもそも世界は重層的で豊かなのだから、豊かなものにして行こう。それに気づかぬ貧しい世界の住人になることを脱却しよう。妖怪もいいだろう。魚もいいだろう。ただ、観光資源を色々捻出することばかりでなく、色々というより、深さがいるのだ。深さによって「色々」は重層になるであろう。蜘蛛の糸がはがねになるためにも。