天の川

五月雨をあつめて早し最上川 松尾芭蕉
雨が降っていない時は川は川として独立のもののようである。川はその由来を静かにたたえてみずからの流れに休らうことができる。その由来が現在進行形的にあらわになったとき、川はもはや川ではいられなくなる。
大雨の前に人はなす術もない。
宇宙船から地上の細部まで見ることができ、生物の遺伝情報を解読することもできるほどの科学技術を謳歌しているこの時代でさえ、台風が来たら街も呑まれる。
天気予報の精度は上がったのであろう。それは天気に対して受動的である解釈であって、能動的に天気に働きかけて天気を変えてしまうものではない。人間活動が影響力をもつようになってはいるが、天気を全体として管理できる訳ではない。
天(あめ)が雨(あめ)となって川に溶けたとき、川は天をたたえているものであると知る。依然として人は天地にかたわらに棲むのである。