子どもの問い(4)先祖とは誰か

御先祖様は一体だれなの? この問い、どう答えますか。どういう問いだと思います?
前回の問いがでてきた話の時に、この問いもぽそっと出てきたのでした。
以前、息子と風呂で話してたことがあります。恐竜の方が人間より年上。今いる生き物で人間がいちばん新しい。というようなことを彼が言ったので、私は問い返しました。それって、人間がいちばん進化してるってこと? 今いる生き物はみんな進化の最尖端だよ。
ちょっと考えて、「それはクワガタのほうが人間より年上だけど、僕の方が7歳だからうちのクワガタより年上ってことでしょ?」だって。
こんな話の前提として、彼の頭には最近夢中になってみている図鑑の、生物進化の系統樹が頭にあるようです。その上で、起源への関心のようなものがあり、それが生物の起源さらに宇宙の起源というふうに展開して、前回の空の由来への問いが出てきたわけです。そして、その脈絡で、そのスケールで、先祖への問いも出されたわけです。
日本の宗教、すなわち日本教は御先祖様教とでもいうような性格を持っています。この図をご覧下さい。     
      
いのちを大事にというと御先祖様に感謝ということになります。そして、この図には虫一匹はいる余地がありません。ご先祖教は人間中心主義的な世界観になります。いいかえると、ご先祖という煙幕のなかには自己中心性があります。なんぼ数が膨大になったところで、身内に閉じこもっている。そこに最近ふうの「いのちの不思議」をとって付けて、生命をはなから血縁という狭いところに局限しておきながら「不思議」だなんて、「いのちの矮小化」だ。
これは、「親に感謝しなさい」という一見素朴な考え、つまりその内側にいくつもの不純な動機を孕んだ考えを、物理的に過去へと延長させたという面をもつと思われます。とかく「親に感謝を」と言ってるのは、子ではなく、子に向かった親としての私です。子ども中心の発想ではなく、親の自己中心的な構図から出る嘆息や憤慨を、正論に仕立て上げた意見です。
息子の発した「ご先祖様は一体誰なの」の内実を占めているのはむろん人間だけでなく、他の生き物、普通は生き物と思われていない鉱物等です。空のもとでは親も子も平等です。そういう発想があれば、親子というとかく一方的になる関係も相対化され、かくして双方向性と平等性が開かれる筈です。